今回と次回のメルマガは「トレーダーの幸福論」と題して贈ります。
前回は資本主義から「お金」を稼ぐコツについて書きました。
しかし、人は資本主義でいくら豊かになっても、
それで幸福になれるわけではありません。
その証拠に専業トレーダーになっても、虚しいと感じる方がたくさんいます。
部屋にこもって一人でせっせとお金を稼ぐ自分にどこか違和感を覚える。
幸せになることからズレているのではないか?と感じるものです。
哲学でも幸福については紀元前からずっと議論されてきました。
哲学には三大幸福論と呼ばれる書物があり、
ヒルティ、アラン、ラッセルの「幸福論」がそれです。
そのほかショーペン・ハウエルの「幸福について」も有名です。
どれも100年ほど前に書かれたものですが、
読めば現代人にも頷けることが多いでしょう。
いずれも人間は「富」を得ても幸福にはなれないと説いています。
当時の富裕層といえば貴族たちですが、彼らはやることがないので、
退屈凌ぎに夜な夜な馬車を走らせてパーティーをしました。
しかし、そんな享楽的な毎日を過ごしても、
どこか心は幸福ではなく満たされず、常に虚しさを感じていたようです。
そんなお金持ちの虚栄的な暮らしの中に真の幸福はないと、
すでに昔の人は結論づけていました。
それは今の世の中にも言えるところがあるでしょう。
ところで「地球幸福度指数」という指標をご存じでしょうか?
これはイギリスの環境保護団体が作った幸福に過ごせる国のランキングです。
この2009年度ランキングの上位10か国を見てみましょう。
1位 コスタリカ
2位 ドミニカ共和国
3位 ジャマイカ
4位 グアテマラ
5位 ベトナム
6位 コロンビア
7位 キューバ
8位 エルサルバドル
9位 ブラジル
10位 ホンジュラス
と意外な国が並んでおり、日本は何位かといえば、75位です。
ドイツは51位、フランスは71位、オーストラリアは102位、
アメリカは114位と先進国は軒並み50位以下。
ただし、終盤になってくるとアフリカの貧困国が軒を連ねており、
141位ボツワナ、142位タンザニア、143位ジンバブエがワースト3です。
このランキングからわかることは、
まずは「お金」はある程度までは、幸福度に寄与するということです。
つまり、ライフラインが整い衣食住が足りるまでの幸福の土台作りにおいて、
「お金」は大いに役立つということです。
しかし、生命の危険が「お金」によって取り除かれたあとは、
「お金」は幸福度にさほど寄与しなくなってきます。
先進国には「お金」はありますが、ほかの「何か」が欠けています。
ランキングの上位に行くには、お金に変わる別の「何か」が重要になのです。
その「何か」とは何だといえば、私は「愛」であると考えます。
それも「自己愛」というものです。
「自己愛」については以前のメルマガでも書きましたが、
おさらいしておくと、心理学者のハインツ・コフートが提唱した概念で、
以下の3つを満たすとことで、自分は人から愛されていると感じて、
心が穏やかになれるというものです。
1 他者からの称賛と承認
これは他人から褒められたり、他人から頼りにされることです。
たとえば他人から「君は凄いな」と褒められたり、
「いつも親切にしてくださってありがとう」と感謝されたり、
「この仕事はお前にしか頼めない」と頼りにされれば、嬉しくなります。
2 理想像との一体化
これは他人を尊敬することです。
たとえば先生を尊敬したり、スポーツ選手を応援したり、アイドルに声援を贈る。
テニスの錦織選手の活躍を見て「凄いな」と思ったとき、なぜだか気分が高揚する。
他人に尊敬ができれば、その人の活躍が自分のことのように誇らしく思えるはずです。
そのときあなたの中の自己愛が育まれているのです。
3 他者との共感
これは他人に共感することです。
「実はあの試験におちちゃってさ」と他人に告白して、
「いや、実は俺もその試験3回は落ちてるんだよ」と聞けば心が楽になります。
自分のことをわかってくれる人がいる、自分は一人ではないとほっとする。
他人との一体感が人の心を癒してくれるのです。
この3つの行為を通じて、人は愛情=幸福感を得ていると私は考えます。
つまり、人間というのは、一人では幸福にはなれないのですね。
お互いに認め合って、お互いに尊敬しあって、お互いに思いやる。
それが幸福感を得るための術であるということです。
ニヒルな人にも響くように、ちょっと意地悪く言えば、
お互いに認め合うのも、お互いに尊敬しあうのも、お互いに思いやるのも、
すべては自分のためなのです。
自分が気持ちよくなりたいからそうしているのだとも言えるのです。
この自己愛を満たしたいという欲求というのは、食欲と似たようなものです。
人間はお腹が減ればイライラします。だからごはんを食べます。
食べれば満足して、イライラはなくなります。
ずっと空腹なら、イライラが募り、やがては怒り出すでしょう。
それは本能として当たり前のことです。
同様に人間は自己愛が満たされない場合もイライラします。
自分が人から認められず、人からぞんざいに扱われ、
尊敬できる人物も持たず、他人に共感することもできない。
これでは自己愛ゲージがゼロに近づき赤く点滅している危険な状態です。
怒りで爆発するのも時間の問題でしょう。
そうなると、その怒りを他者にぶつけてトラブルになるか、
あるいは自己にぶつけてうつ病になるかのいずれかです。
つまり、人間が心身ともに幸せになるためには
「お金」と「自己愛」を両方満たすということが、必要なのだと思います。
特に衣食住が足りている先進国では、自己愛を満たすほうにウェイトを置かないと、
到底心の平穏は満たせない、決して幸福には届かないでしょう。
さて、私が何を言いたいのかというと、
トレーダーという職業は「お金」は得やすいが、「自己愛」は得にくい。
実は幸福感を得るのが難しい職業であるということです。
一般的に「お金」を得やすい職業は、他人から「愛情」を受けにくい職業です。
年収が高い人は、激しい競争社会に身を置く人でしょう。
競争社会においては、周りはすべて敵です。
人から認められず、尊敬されず、共感されない立場になりやすい。
そうなってしまうのも自分が他人を認めず、尊敬をせず、共感をしないからです。
自分が人に愛情を与えないから、また人も与えてくれない。
そんな競争社会に身を置いているとスムーズに愛情が得られないから、
心が幸福感で満たされることはないのです。
このように競争が激しい社会においては、人は幸福になりにくいのです。
先進国の幸福度ランキングの低さがそれを物語っているのではないでしょうか。
逆に競争がゆるやかなところは、お金はそんなには手に入らないけれども
お互いに認めやすく、尊敬しやすく、共感しやすい、
そのため幸福感を得やすい社会になっているのだとも思います。
さて、話を戻しますが、困ったことにトレーダーというのは、
他人に認められない職業の代表格なのです。
初対面の人に職業を聞かれて「専業トレーダーです」と言っても、
一体誰がその人を認めてくれるのでしょう?
ほとんどの人は「遊び人みたいなことをやっているんだな・・・」と思うし、
「凄いですね」という人も、心の底では妬みがあるのではないでしょうか?
そして他人がそう反応するのは予想できるから、
自分がトレードをやっているだなんて、とても人には言えない。
・・・そうではないですか?
自分が誇りに思っているものを、
他人に軽く見られれば、誰でも傷ついてしまいます。
だから、他人に本音をさらけ出すことができない。
そこに心が満たされない苦しみがあります。
つまり、トレーダーという職業は、
人から認められにくい、尊敬されにくい、共感されにくい。
故に自己愛が満たされない、
故に満足な幸福感が得られない、
故に長続きしないのです。
人生の目的が幸せになることだとしたら、
トレーダーという職業は、その目的には合致していないのだとも言えます。
では、トレーダーが「幸福」になるためにはどうすればいいのか?
その方法については次回に続きます。
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