昨日マンション経営で年7000万円の賃貸収入があった消防士が、
地方公務員法で禁じられている兼業に相当するとして、
懲戒処分されたニュースがありました。
このニュースに対してネットでは擁護的な意見が多く見られました。
だいたいこういう意見です。
「年に7000万円も賃貸収入があったら、
普通は命を失う危険のある消防士などやらない。自分なら遊んで暮らす。
故にこの人は人命救助に誇りを持った人であるから、むしろ尊敬できる人物だ」
あなたもそう思ったでしょうか?
私はこの意見には3つの先入観があると思いました。
一つ目は「お金があったら遊んで暮らすはずだ」という先入観
不労所得が年に7000万もあったら、普通はそう思うかもしれませんが、
人間ずっと遊んでは暮らせないものです。
実際に大金を手にした人でずっと遊んで暮らそうという人は稀でしょう。
それは毎日プータローのように暮らしていても、幸せにはなれないからです。
誰からも感謝されることはない。
ただお金を使って人にサービスしてもらうだけの人生。
そういう生活は逆に辛いものです。
地域住民からもあの人は金持ちの遊び人だと冷たい目で見られることでしょう。
だから「お金があったら遊んで暮らす」というのはただの思い込みです。
自分が時間を惜しんで働いているとそのように思うかもしれませんが、
実際にお金持ちの立場になったときは必ず人生に退屈してしまうはずです。
定年退職した人が、膨大な暇に耐えられないように、
何もしないなら働いて人から感謝される方が全然マシだと考えるものです。
二つ目は「お金があったら危険な仕事などやるはずがない」という先入観
お金があっても、人は命を賭すことがあります。
たとえば昔のヨーロッパの貴族は裕福すぎてやることがなかったので、
わざわざお金を払ってまで軍隊に入ったそうです。
昔はお金を出せば軍職などの職業の資格を得ることができました。
お金を払えば、好きな職業につけたのですね。
なぜ遊んで暮らせるのに、わざわざお金を払ってまで仕事をするのか?
しかも、それも命を落とす危険がある軍隊職についたのか?
それは自分の人生に「大義」が欲しかったからでしょう。
国のために命を懸ける。
そのほうが遊んで暮らすよりも、生の充実感をたっぷりと得ることができる。
多くの人に感謝もされるし、やりがいもある。
消防士という仕事は、世間一般的には立派な仕事です。
そして、命を懸けて誰かを救うという行為には大義があり、
それはある意味、とても甘美なことなのです。
7000万円の賃貸収入で遊んで暮らすよりも、
消防士の仕事をするほうが、ずっとやりがいがあるだろうと私は思います。
三つ目は「消防士という職業が清廉なものである」という先入観
このニュース、消防士を別の職業に変えたらどうなるか?
たとえば同じ地方公務員の「裁判官」や「教員」が
賃貸経営で年7000万得ていたとしたらどうか。
おそらく聖職者が金欲に走るなんてけしからん!
懲戒処分は当たり前だと思う人が多数ではなかったのでしょうか。
擁護的な意見にはならなかったと思います。
擁護的な意見になったのは、消防士が自分の命を顧みないで人命救助を行う
立派な職業だという思いこみがあるからです。
遊んで暮らせる収入があるのに、
人のために命を懸けるという割が合わないことをしている。故に立派である。
・・・となると人間性までもが肯定されてしまうのです。
この懲戒処分された人物が本当はどんな人物なのかはわかりません。
記事を読んだイメージ通りに清廉潔白な方かもしれないし、
イメージとはまったく違う欲深い人かもしれません。
でも、このニュースを読んだ人は、
「この人はいい人に違いない」と思い込んだ人が多数でした。
ただの状況報告しか書いていない数百字の文章しか読んでいないにも関わらずに、
なぜ、この人はいい人だと思ってしまうのか?
なぜ、この人を思わず擁護してしまいたくなるのか?
それは上記の先入観があるからでしょう。
そしてなぜ、そんな先入観を持っているのでしょうか?
それは突き詰めていくと「ただ自分が気持ちよくなりたいがため」だと私は思います。
この人のことなんてぶっちゃけるとどうでもいいのではないですか?
あなたの人生にはまるで関係のないことです。
このような先入観を持っているのは、
「素晴らしい人間」や「美談」を自分勝手にイメージしてその対象を尊敬することで、
自分が気持ちよくなりたいからではないですか?
心理学的には人を尊敬すれば、自分も気持ちよくなれるのです。
人間は自分が気持ちよくなるために赤の他人を都合よく利用しているのです。
つまり、以前このコラムで書いた欲望の「色眼鏡」が働いているのです。
というわけで、ニュースを読んだときに浮かんだ感想。
それを自分なりに客観視していくことは、相場でも役に立つはずです。
トレーダーを目指すなら、必ず浮かんだ感想が「本当にそうか?」と疑うことは、
色眼鏡(自分の勝手な都合・欲望)を排除して投資対象の通貨を客観視する訓練になります。
反対にトレーダーを目指さないのなら、そんなことはしないほうがいいでしょう。
この人どう思う?と人に聞かれたら、強く否定などしてはいけません。
きっと捻くれた人間に見られてしまいます。
「賃貸収入は問題があったかもしれませんが、
そんな大金があるのに消防士をやるなんて立派な人ですよね」
と多数派の意見を察知して、それに併せて答えるのが無難です。
賢い大人はみんなそう答えるはずです。
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